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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

偽学生証!

             ≪八月二十一日≫      -壱-



  疲れの為か、グッスリと眠り込んでいた。


 ここがタイであることを再確認しながら、初めてのタイの朝を迎え

た。



    会長 「移動するから、荷物をまとめておけ!」


      皆  「ええ?もう移動ですか?」


      会長 「安いほうがええやろ!」


      皆  「そら・・・そうや!」



  駅の反対側にある、新華南峰旅社へ移るという。


 この宿は、1ルーム45バーツ(≒675円)、二人ずつ入ると一泊2

2.5バーツ(≒340円)。


 一階が食堂と受付になっていて、広々とした部屋になっている。


 正面に広い階段が、建物の中央をえぐるようにして構えていて、二階

から上が宿舎となっている。



  駅で両替を済ませて、宿舎を訪ねる。


    会長 「部屋はありますか?」


    受付 「今は満室です。」


    会長 「ダメですか?」


    受付 「午後1:00がチェックインですから、その時もう一

          度来て下さい!」


    会長 「空きますか?」


    受付 「チェックアウトする方がいますから、大丈夫だと思い

          ますが・・・・。」


    会長 「OK!」



  安いだけあって、評判がいいのか流行っている。


 一時間ほど待つと、チェックアウトする旅行者が何組かいて、ちょう

ど三部屋空いたとのこと。


 案内された部屋は、昨日の所よりも狭く、二人で寝泊りするにはちょ

っと窮屈な感じだ。


 それでも、シャワーとトイレがついていて、俺達にとっては十分すぎ

るほどの宿なのかも知れない。


 とにかく我々はヒッチハイカー。


 野宿で旅するのが当たり前なのですから、これ以上の贅沢はない。



  下の食堂で朝食を取り、マレーシアホテルを捜すためバスに乗

り込んだ。


 マレーシア・ホテルは、旅のガイド書に書かれていて、安いホテルの

一つ。


 我々はここで、旅行者から旅の情報と偽学生証を作ることにした。


 この偽学生証、いろんなところで手に入り、ほとんどの旅行者が携帯

しながら旅行を安く済ませている。


 何しろ運賃や映画館やミュージアムにもってこいなのだ。


 特に日本人は童顔で若く見えるためほとんどばれない。



  それでも最近はチェックが厳しくなってきていると言う。


 これから向かうインド・パキスタンの鉄道運賃やヨーロッパでの学割

には効果的なのだ。


 紙切れに、自分の名前と生年月日、それに大学の名前を書き込んで、

写真をつけてフロントに提出するだけで、二日後には出来てきている。


 実に偽物らしい学生証なのですが、インド・中近東ではなかなかばれ

ないらしい。


 らしいと言うのは、まだ使った経験がないからだ。



  バスは4番、その他いろんな乗り物が走っている。


 そのほとんどが日本車の中古車なのには驚かされる。


 さすがにタイの首都バンコック、車の数と騒音には参ってしまう。


 二人乗りの小さなオート三輪車から中型車に大型バス。


 タクシーが(日本製)一番高い。


 中古車なので?料金メーターはない。



 だいたい旅行者値段と言うのがあって、10バーツ~20バーツ(≒

150~300円)が相場だそうだ。


 これも交渉次第でどうにでもなると言う話が聞こえてくる。



  次いで高いのがサムロと呼ばれているオート三輪だ。


 車体が分解しそうなけたたましい音をたてて、混雑している通りをス

イスイ走っていく。


 このオート三輪の乗車賃が大体、5~15バーツ(≒75~225

円)。


 次に安いのが、乗合バスの中でも、中型のライトバン。


 これは、一般市民が営業しているようで、前には家族が乗り込んでい

る場合がある。


 乗車賃は2バーツ(≒30円)ぐらいで、バスと同じルートを走っ

て、バスの少ない現状これをカバーしている。


 このバスは、バスストップに来ると、行き先を告げ乗る人がいないか

どうか確認していくようだ。



  大型のバスが一番安くて、乗車賃は0.75バーツ(≒11~

12円)。


 日本と同じ乗合バスなのですが、これが大変なオンボロバスで、日本

製なのか車体には”HINO”と書かれてある。


 中の計器類は、ほとんど動かず、クラッチもハンドルも今にも外れて

しまいそうな、どうしようもないバスが、平気で客を乗せて走っているのが

現状だ。



  このバスと言う奴は、日本では考えられないほどずさんなので

すから、気をつけて乗ることが大事です。


 人が今から乗り込もうとしていても、バスに手をかけてぶら下がって

いようとも、関係なく発車してしまうのですから、危ないったらありゃしな

いのです。


 バスが止まったら、すばやく乗る。


 そうしないと、何台も乗り過ごしてしまうかも知れません。



  タクシーとかサムロを拾う場合も大変なのです。


 運転手が英語を話せば良いのですが、通じない人が多く、地図を見せ

ても運良く目的地にたどり着くとは、誰も保証してくれないのです。


 その上、旅行者と言うと、まず値を吊り上げてきます。


 20~30バーツと言ってきますから、そういった時はこちらの金額

を主張し、それでもダメな時は乗らないことです。


 車の多いバンコック、いくらでも走っているのですから。



  その他、二三人で探す時は、一人一台ずつ止める事です。


 ”あっちの車はいくらだけど、あんたはどうする!”と言って、交渉

することです。


 こういったことをしないと、タクシーには乗れないでしょう。


 目的地に着いて、法外な料金を取られるのが目に見えています。



                   *



  偽学生証の手続きを済ませて、暫くロビーに座りながら、同じ

旅行者などと情報の交換をする。


 すぐ近くの売店では、十数人の若い女性達がボールペンなどの内職に

汗を流しながら働いているのが見て取れる。


 ああいった若い娘達が、夜になると娼婦へと変身するのだろう。



  午後になって、新華南峰旅社近くにある”Air・サイアム社”の

営業所に入る。


航空券を購入する為ではなく、情報収集が目的。


 客の姿もなく、小さな代理店の為、予定変更。


 会長の得意の広東語・英語・タイ語を駆使し、カウンター内に居る女

子事務員を口説き始めたではないか。


 何とかして、タイの夜をガイドしてもらおうと必死でくどく。



  何とか通じたらしく、夕方5時に待ち合わせることを約束し

て、ホテルに戻った。


 只今、午後の3時。


    皆  「やったね!やったね!さすが会長!」


 二時間後、夢は無残にも破られる。


 約束の時間が来ても、彼女は現れず、何とも惨めな夜を迎えることと

なってしまった。


 しかし、そんな事にめげる我々ではない。


 過去のことは、早く忘れる!


 長い旅ではこのことが大切なのですから。



  初めての海外旅行だというのに、金のかかることはただひたす

ら我慢をし、闇の広がった街の中をただひたすら歩き回る事こそ大事なので

ある。


 途中、ものすごいスコールに遭遇。


 仲間と逸れてしまったことに気がつき引き返すと、スコールを避けて

なんと喫茶店に居るのを見つけた。


 仲間も気がついたようで、中から手を振るので我々も中に入ろうと、

階段をトントンと上がったのは良いが、これが迷路?


 確かに仲間は、二階に居る。


 二階への入り口はこの階段だけと思い込んだのが間違いの元だった。



  なんとそこは、売春宿だった。


 若い娘が数人座っていて、我々を歓迎してくれるではないか。


    鉄臣 「これって、売春宿?」


    俺  「そうみたいだな!」


    鉄臣 「出よう!」


 慌てて階段を戻る。


 何ともそそっかしい話で、その夜はこの間抜けな話で大盛り上がりと

なった。



  スコールが上がって、水溜りの中を歩き回って、宿舎に戻ると

もう夜の10時だった。


 早速、シャワーを浴びる。


 初めてのタイですが、何とか上陸できたようです。


  ”やれやれ!”



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